|
08.生きてる限り、必ず2人の思い出は増えていくよ。
もう、自分が解らなくなって、何でなんだろう?
…って思うことっていっぱいあると思うんだ。
結が、癇癪を起こすのをみたのは、このときが初めてだった。
「そんなに非常識な人間なわけ?!」
「結…、俺、全然気にしてねぇし、そんな怒んなって。」
「ダメだよ、剣十、ここで下がったら一生そういう目で見てくる。」
「頭がお堅いんですね。まだお若いのに。あはは。」
結が、実母と不仲なのは、なんとなく解ってはいたんだけど。
「もう、ヤダ。嫌な思いばっかり要らない!」
「何言ってんだよ…。」
「嫌ならやめればいいじゃないの。」
そう言い捨てて喫茶店を出たあの人は、
本当に結の母親なんだろうか。
「もぉ…嫌だ…。」
「生きてる限り、必ず2人の思い出は増えていくよ。
それは、嫌な思い出ばかりじゃない。…きっと。ううん、絶対。」
「…そう、思う?」
「うん。きっと、そうなる。当たり前じゃん。」
だって、今こんな風にお互いの感情をぶつけ合った事だって、
一つの思い出なんだ。
「一緒に生きていこう。俺、結の横に居るよ。」
高校生のちっぽけな願いだろうと、思うかもしれない。
けど、それが今の俺に出来る最大限の事だと思った。
結は、少しはにかんで、
「ありがとう」 と言った。
|