|
07.たった一度の幸せのために、どれだけ泣いただろう。
俺たちの付き合いが数ヶ月も経った頃、結は担任に呼び出されていた。
その内容は、自分の進路のことで…。
進学を選ぶのか、就職を選ぶのか。
俺は、結の家庭の事情をそれほど詳しくは知らない。
それは、結が話そうとしないからで、俺自身も聞かないからだ。
とりあえず、母親とはあまり上手くいってないって事は言える。
喫茶店は、それなりに繁盛している。
とりあえず、結は母親をあまり好いてなくて…、
「どーしたの?」
そんな事を考えていると、結が呼び出しから帰って来た。
「…結、どーすんの?」
「うーん、どうしよう…?♪」
おどけた様子でそう言う結。
そうだよな。まだまだ子どもな俺たちに、進路なんて…。
「たった一度の幸せのために、どれだけ泣いただろう。」
「…え?」
「自分の歩もうとする道の先は、私には灰色がかって見えて…。」
「結??どうした??」
「それでも、君が隣に居るから、勇気を出して歩んでいける。」
そう言って、ニコッと笑った。
「ゆ…結?」
「今の、好きな本の一文なの。私も剣十がいるから、勇気を出して歩んでいける。」
真っ直ぐ、俺を見る瞳は、もう迷いなんてないみたいだった。
「今日、お父さんに話してみる。」
「…うん、頑張れよ。」
眼に見えたことを、俺は何も出来ないかもしれない。
だけど、君の震える手を握り、引っ張って歩いて行ける。
たった一度の幸せのために、君は涙を流すかもしれない。
なら、俺は君の流した涙と同じ多さを、楽しさの涙に変えてあげるから。
|