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04.君を失うよりも悲しいことは無いよ。
朝、喫茶店の前を通っても、何の反応もなかった。 いつも、明るく笑って出てきた彼女の姿は、
今日はなかった。
それに対して深く追求するほど、 親しいと思われていないと思うので、 携帯に連絡する事はやめて、何気ない素振りで学校に向かった。
「なぁなぁ、聞いた?2年のA組の女子が、交通事故で入院したって話。」 「え?!入院する程の大事故だったのかよ!?」 「らしいぜ。まだ意識戻ってないって。」 「誰なんだよ。その女子って。」 「えっと、何て名前だったかなぁ。」
廊下ですれ違った男子生徒2人の会話に
心臓が飛び出しそうになった。
A組ってあいつのクラスじゃん。
『まさか』
その言葉が俺の頭の中をぐるぐると巡ってた。
教室に朝礼の始まりのチャイムが空しく鳴り響く。
まだ来てない彼女―――
無意識に携帯を握っていた。
「意識不明だったら、電話なんて出れないじゃんかよ。」
そう解っていても…。 コールする自分が居た。
-----プルルルル
-----ガラッ
教室の扉が開いて担任が入ってくる。 これ以上、コールする事は出来ない。
あと数秒。せめて一言。声が聞きたい。 君の安否を知りたい…。
「朝礼を始める前に、皆にお知らせがある。 A組の…」
担任の言葉に心臓が極端に反応する。
-----ヴヴヴヴヴ… すると、携帯が震えた。
メールの着信を知らせた携帯を開くと、 送り主は彼女だった。
≪今日、寝坊した。≫
たった1行のそれだけで、涙が出そうになった。
事故をしたのは、別の生徒で、 先ほど聞いた噂程の重体ではなくて、検査入院、って事だった。
そっけない文章が写された携帯を見つめて俺は想う。
君を失うよりも悲しいことは無いよ。
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