|
05.初めての口紅
そろそろ夜も明けようとしています。
「もうそろそろ、寝たかな?」
小さな箱には、赤い口紅がひとつ。
これは、5番地みどりの屋根の家・2階の手前の部屋のサラちゃんに贈るものです。
サラちゃんは、数時間前に来た時には起きていたのです。
だからサンタはプレゼントを渡す事が出来ませんでした。
「おい。3番地赤い屋根の家、Rouge・Saraの家に着いたぞ。」
「ありがとう。」
サラちゃんの部屋に入ると、やっぱり、テーブルの上にコップとメモがありました。
『サンタさんへ やっと出来ました。
遅くまで起きていたからサンタさんが来なかったら、どうしよう…。
サンタさんなんて、居ないんだって、ボビーが言います。
私も、そんな気がしています。でも、きっと来てくれると信じています。』
サンタは、今まで起きていたのだろう、と思われる部屋を見渡しました。
「遅くまで起きていたのは、いちごみるくを作ってたのか…。」
サンタはそれを飲むと涙が出てきました。
自分の今までのことを、悲しく思ったのです。
なぜか狩人に追われ…森へやっとの思いで逃げてきた。
そこで小さな家があったので親切な小人としばらく暮らしていた。
優しい病気がちのりんご売りのお婆さんに出会い…。
親切だと思っていた小人に裏切られ、サンタの姿になった。
そこで自信家のトナカイ達に出会い、意味も解らず、
赤鼻のトナカイにも出会い、共にプレゼントを配った。
そして、この街のクリスマスでは、いちごみるくを贈る、という
変な風習があった。
そして、子ども達は夜更かしをしてまでも…。
サンタにいちごみるくを作っていた。
サンタは、愛されているんだと、知った。
自分も、その様に愛されたかった。
狩人や小人に追われたり裏切られたりするのではなく…。
サンタ、いやサンタに変えられた少女は…。
涙が止まらなかった。
そのサラちゃんの作った、愛のこもった暖かい
いちごみるくを飲んで、涙は止まらなかった。
サンタは、ちょっと大人になりかけたサラちゃんの枕元に
赤い口紅の入った小さなプレゼントを置いた。
そして、いちごみるくを、一滴と残さず、飲みきった。
その瞬間…!
「うっ…!!!!!あぁっ!!!!」
目が覚めると、ベッドの上だった。
「ん…?あれ?ここ、どこ??」
見渡すと、枕元には小さな箱がひとつ。
そして、一枚のメモ。
『Thank you--Sara』
起き上がると、そこはサラちゃんのベッドの上でした。
「夢…だったのかな?」
あまりにもリアルな夢…。
サンタに変えられた少女・サラは、再び少女の姿に戻る事が出来ました。
…でも、サンタに変えられたのかも、小人に出会ったのかも…。
それは夢の話なのかもしれません。
もしかしたら…真実を知るのは…本物のサンタだけ…だったりして。
|