[A Mermeid Princess Tragic]
[06B]
ちょうど百年が過ぎた頃。
泡となったルイは広い海の中でふと思い出した。
自分が何者であったのかを。
そして感情は溢れ出す。
私はあの人に恋をした。
私はあの人を愛した。
私はあの人に裏切られた。
それでも愛は続いていた。
彼に会いたい。遠くからでいい。誰かが隣にいてもいい。彼に会いたい。
泡となった人魚の時計は、王子の元を去った時のまま止まっていた。
ルイは自分の意思で動き出した。
動き出した泡は、だんだんと形になっていった。
人間のそれに良く似た形の泡がふと止まった。
いや、ソレはもう泡ではなかった。
ソレはとても美しい声で歌っていた。
そして、人間の足の代わりにソレは魚の尾を持っていた。
―――契約は切れていた。
しかし契約の跡は残る。
昔の彼女を知る者と出逢えば、たちまち逃げ出すだろう。
彼女は人魚のカタチをしていた。
しかし人魚には持ちえない色を纏っていたから…。
魔女と契約したルイは魔女と同じ髪や瞳の色を纏っていた。
漆黒という色を。
