[Sprit×Drug−精神安定剤−]
[07BAB]
息を切らした姫の姿があった 。
「っ、はぁ…っはぁ…翔くんっ、だいじょうぶっ?」
「姫!」
「様子がおかしかったから…ちょっと抜けて来て…」
「ありがとう…!早く逃げないと…ヤバイ。」
このままでは、姫まで危険な目に遭ってしまう。
ドアを閉め、崇が何をしに行ったのかは解らないが、
とりあえず逃げなければいけなかった。
「姫っ逃げよう!」
「うん!」
そう言って、その暗闇から抜け出し、必死に走った。
でも、崇が追いかけてくる様子は無かった。
「翔くん、何かおかしくない?」
「うん、俺も今そう思ってた。何で追いかけたりして来ないんだ?」
「追いかけられないのが一番だけど、でも様子が変だよね。」
「うん。…どうしよう。」
このまま崇なんて放って逃げる、それが1番助かる道なんだって事。よく解ってた。
だけど、今まで一緒に居た仲間の、奇怪な行動を、キッパリと見捨てられる訳が無かった。
「戻って…みる。」
「・・・・・・・・」
姫は何も言わなかった。姫も、そう考えていたからだ。
でも、姫まで一緒に連れていくわけには行かない。
「姫は待ってて。」
「…そう言うと思った。でも、1人で行くのは、危険過ぎる!」
「だからって姫と一緒には行けない!」
「・・そうかもしれないけどっ!」
どうすればいいのか、もう、俺には考えられなかった。
彼女を守りたいと思う反面、彼女に一緒に来て欲しいと思う。
「俺は、男として最低だ。」
「え?どうして?」
「…っ、好きな人に支えてもらってばかりで…守れてないっ!」
そう言った瞬間、自分が告白した事を知った。
「いやっ、今のは…!っ、その!」
「ありがとう。」
「え?」
「ありがとう。凄く嬉しいよ。」
「それって…!」
姫は、にこっと微笑んで、触れるだけのような口付けをした。
「姫っ!?」
「そんなに慌てなくてもいいでしょ。こっちが恥ずかしくなっちゃうよ。」
「凄く…嬉しい。」
「ふふ、私も。」
…と、自分が幸せに浸っている場合じゃない事を思い出した。
「崇…。どうしたらいいだろう。」
「あ!北村さんに一緒に来てもらうっていうのは?」
「大家さん?」
「うん。北村さんってね、警察官だったの。」
その情報を聞いて、あの軽い喋り口調の大家さんが凄く頼もしく感じた。
姫はすぐに大家さんに連絡を取り、数十分もしない内に彼が来た。
「突然呼ぶからビックリしたろ〜。大丈夫か?」
「はい。今のところ。」
「翔くん。危険な友達を持つと大変だな。」
この状況で言われると、冗談が冗談に聞こえない。
「じゃ、早速行こう。」
後から現れたリーダーの指示に従って、俺達はさっきの倉庫へと向かった。
「こんな暗い場所だったんだね。」
「うん。さっきは、必死だったから、気付かなかった。」
よく見るとそこは、街灯も少なく、人通りも殆ど無い場所だった。
----カチャ---
恐る恐る、北村さんが扉を開ける。
「やあ、皆さんお揃いで。」
突然聞こえたその声に体がビクッと跳ねた。
「翔、お前、本当に酷いヤツだな。」
「崇、何言ってんだよ…酷いって…それは…」
「お前を殺して、俺も死のうとか思ってたのによ。失敗だよ。」
俺を殺す!?そして、自分も死ぬ?
「これなーんだ。」
暗い倉庫の中で扉から差し込む光に反射して見えたのは、カッターナイフだった。
「…崇。お前、何するつもりだよ。」
「お前と一緒に歩んで行けたら、どれだけ幸せだったかな。」
「ちょっと、お前…マジで止めろよ?!」
「そうだ!青年!気を静めろ!」
「うるせぇおっさんは黙っとけ!!」
そして、崇はカッターを自分の首元に当てた。
「動くな、崇!一緒に歩いて行こう?今からでも遅くない!」
「翔。俺、お前を居れて楽しかったよ。」
-----シュッ
「キャァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!」
