[A Mermeid Princess Tragic Of Rid]
[02]
「私の愛するノディス国の民たちよ。大きな喜びと祝福の言葉をありがとう。」
ジャンク王子となったリドは、完璧な王子を演じたのです。
難しい公務なども一通りこなしていきました。
国民は誰一人として王子を王子でないと思う者など居ませんでした。
事実を知るたった一人の魔女・キサヒ以外は。
リドはキサヒとの約束通り、助言者として迎える準備をしました。
「今日からこの国の繁栄を願い、彼女を助言者として、迎えようと思う。」
「お、王子様、この者は一体…。」
「昔からの友人だ。信頼出来る第3者からの助言が必要だと前から思っていた。」
「しかし…大臣達が何と言うか…。」
「ならば彼女は、私が個人的に契約を結ぶ。それで文句はないな。」
「は、はい…。」
「キサヒ。初めは私との個人契約、という事になっているが、その内に、」
「ええ。解っているわ。私の目的の1つはこの城へ住まう事。それが必要だから。」
「大臣達が何かを言って来たら、王子の名を出せばいいだろう。」
「あら、随分と良心的ね。元は殺人鬼なのに。」
「王子になると、心に少し余裕が出てきたからな。…殺人鬼はやめろ。」
それからというもの、リドはキサヒの部屋へ毎日通い、助言を求めるようになっていきました。
「なぁ、キサヒ。来週2人の隣国の王女と見合いする事になったんだ。」
「…ミッシェルとエリザベスでしょう。」
「ああ。どちらかと結婚した方がいいか?」
「そうね…。エリザベスは、将来浮気をして、貴方を苦しめそうよ?」
「そんな事までよく解るもんだな。」
「私を一体誰だと思っているの?ジャンク王子?」
「そうだな。ミッシェルの方は?」
「ミッシェルは…」
そんな2人の関係は、刻が経つにつれて、深いものになっていきました。まるで、魔女の罠にじわじわと嵌るように…。
「キサヒ、お前は本当に恐ろしい女だ。」
「あら、酷い言い様ね。」
「俺は、今までに信じていた者はルイだけだった。ルイは、全てを受け入れてくれた。」
「だけど、セナガの術をかけられてからおかしくなった?」
「ああ。だから殺した。」
セナガから人間の足を手に入れたルイは少しずつ、今までと変わっていっていた。
そして、ルイが完璧に壊れたのは、セナガがジャンク王子を奪ってから。
彼女は憎しみ以外の何をも持たぬ、ただの抜け殻となっていた。
セナガや王子への復讐の為ならば、親友のリドをも利用した。
それを裏切りだと解釈したリドは、ルイに死を与えたのだった。
「キサヒ、お前は何でも知っているんだな。」
「ええ。これから起こる事は、何でも知っているわ。」
「お前、何が目的だ?」
そう言って、リドはキサヒの首に手をかけた。
しかし、行動はキサヒの方が早かった。
「何でも知ってる、そう言ったでしょう。」
キサヒは、リドの姿を元のリドへと変えた。
「お、お前…俺が居なくなったら…助言者としての立場が危うくなるんだぞ!」
そして、リドをまたジャンク王子の姿に戻した。
「今はあくまで“警告”よ、リド。次は無いと思いなさい。」
