[No Distance小説大会 Vol.01]
著者:藍々 碧
[26話]
コンビニの前に着くと、裕香はやっぱり店内に居た。
「バイト、ちゃんとしてるじゃん。」
「うん。とりあえず、一安心かな。」
「いらっしゃいませー。あ。」
必死に目で合図するけど、裕香は答えてはくれない。
「…今日は星崎さん居ないみたいじゃん?」
「うん。だね。」
それから、20分くらい…粘って店内に居たけど、今日は店長さんらしき人が居て、
しかも、お客さんが増えてきて止むを得なく私達は店を後にした。
「…、私裕香がバイト終わるの、前の公園で待ってる。」
「え?…うーん、じゃ俺も。」
「忠昭…。」
公園は裕香のコンビニを曲がった先にあって、裕香は家に帰る時に必ず前を通る。
園内には、数組のカップルと散歩中の人などで賑わっていた。
「あそこのベンチ行こう。あそこからなら、見えるし!」
「うん。…それにしても、カップルが多いんだなー。」
何気ない言葉だったんだと思う。
だけど、私はなんだか敏感に反応してしまって…。
「う、うん。そう…だね。」
自分達も、素敵な恋人同士なんだと、胸を張って言えない微妙な感覚が、
少し悲しく思った。
「ん?どうした?急にしょんぼりしたけど。」
「…うーん、早く裕香の事が上手くいけばいいのにって思う。」
「そうだよな。だけど、人の感情ばっかりは…何とも言えないしな。」
「星崎さんが、裕香のこ…」
「星崎さん!」
話の途中で、植木を挟んだ後ろ側で女の子の発した気になる単語が聞こえた。
「何…?今の…。」
「さ…さあ…あ、星崎さんじゃんっ!!」
「キミ?が手紙くれた子…?」
「あ、はいっ…!あの…星崎さん…ゎ、私…」
どんな風に考えたって、この状況って…
「「告白…?!」」
「私…入学したときから星崎さんの事が…好きで…あの、その…付き合ってください!!!」
私は、あまりの衝撃的な展開に手が震えていた。
星崎さんが「Yes」と…もしも、そう返事してしまったら…。
彼の好きな人が、この目の前にいる女の子だったら…。
裕香だけの事じゃない…私だって、忠昭だって…。
そして、星崎さんはゆっくりと、言った。
「あ…ありがとう。気持ち、凄く嬉しい。けど、ゴメン。」
「…っ!…な…、何で・・ですか…?」
「えっと、好きな子が居るし。」
「それでもいいです!!私、一緒に居られるだけでいいんです…!」
「ホント…、ゴメン。」
いつの間にか、手の震えは止んでいた。
ギュッと握ってくれた忠昭の優しさが嬉しかった。
そして、失恋した彼女は、あの言葉を口にした。
私達が何よりも知りたい…事実。
「その好きな人って…誰なんですか…。」
