[No Distance小説大会 Vol.01]
著者:藍々 碧

[ 5話]


「ただいまぁ…。」

自分の部屋に戻って部屋着に着替える。

あの後、私は、入り口近くの席に座ってる尾方くん達の事を
裕香に知られちゃいけないと思って、のんびりケーキと紅茶を時間をかけて食べた。

そんな努力もあって、尾方くんと裕香の対面も避ける事ができて、
無事に帰ってきた、という訳。

「何か、凄い疲れた。1日の内に色んな事ありすぎ…。」

これから、どうしたらいいんだろう。

現状維持、って言っても今日みたいな事が起こったら?
今日はたまたま、タイミングが良くて顔合わさなかったけど…。

-----ピルルルル-----ピルルルル

「・・電話?」

表示は 尾方 忠昭。

「も、もしもし?!」
『・・あ。川原さん?』
「うん、っどうしたの?」
『さっき、Dreieckで疲れたかな、と思って。』

気付いてくれてたんだ…!

「裕香が尾方くんに気付かないかってドキドキしちゃったよ。」
『俺も、店に入って川原さんの姿見つけたとき、どうしようかと思った。』
「でも、良かったね。」
『うん。席は離れてたけど、川原さんと一緒にケーキ食ってる感じしたし。』

なんか、その言葉を聞いて気持ちがふわっ、と温かくなるような気がした。

『あの…さ。学校とかではちゃんと川原さんって呼ぶからさ。』
「ん?」
『2人だけの時は、友枇…って呼んでもいい?』

電話口から聞こえる自分の名前を呼ぶ声に、体が反応した。

こんなにも嬉しいものだなんて、今まで知らなかった。

『もしもし…?』
「っあ、ゴメンなさい…嬉しくてぼーっとしちゃってた…。」
『ははっ、変な友枇。あと、その、俺の事も忠昭って呼んで欲しい。』
「た…だ、、ぁき。」
『最初、名前呼ぶのって、何となく恥ずかしいよな。』
「うん、、特別な感じがする。」

そう。ただ、名前を呼ぶだけなのに。

『じゃ、そろそろ切るよ。』

もう、切っちゃうの…?

「う…うん。」

忠昭///も、ずっと私と話してる訳にはいかないよね。

『もしかして、寂しい?』

顔が赤くなっていくのが解った。

「なっ、、そんな事・・・!・・あるかも。。」
『嘘っ、〜…・・マジで?予想してない返事だったから、その…嬉しい。』
「自分でもよく解らないけど、切っちゃ嫌だって思った。」
『寂しいってもう1度言って?』
「え?」
『お願い。』

忠昭に言われるまま、

「寂しいよ…。」

と言うと、

『っ、マジでヤバい位嬉しい。…友枇、俺やっぱり好きだわ。』

「あ・・ありがとう。私も、嬉しいょ。」

『じゃ、そろそろ本当に切るよ。長話ゴメン。』
「ううん、そんなっ全然!」
『じゃあ。また。』
「うん。明日、学校でね。」

電話が終わった後、とても心地良いふんわりとした気持ちになっていた。

そして、昼間の私と現在の私の尾方くんへの感情が、
明らかに変化している事に気付いた。

「私…尾方くんの事…。」

好きになっちゃってる。


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