[No Distance小説大会 Vol.03]
[お題:腹黒の五日]
銀行へ戻る途中、足元を確認しながら歩く。
こんなご時勢、財布見付けて警察に届ける人のほうが少ないんだろうけど、「どうか、親切な人が拾ってて!」
よく通る公園に、見知った男が一人。
そいつは私の財布とおもしきものを持っていた。「…り、理恵。さっきそこで財布を…これ、やっぱり理恵の、だよな?」
見間違いではない。
この男は正真正銘、二週間前に別れたばかりの元彼である。こいつに未練がないわけじゃなかった。
私はまだ彼を好きだった。
でも、簡素な理恵の性格は、彼への想いを彼には伝えてはくれなかった。「俺たち付き合ってるのかな?理恵の気持ち解んないから、俺不安だよ。」
乙女が蛋白な男に言うその台詞を言われて、理恵たちは別れた。
「ん?…あ!…誰だっけ?」
とにかく、彼には未練を見せたくなかった。
「理恵…、俺…」
「どこの誰だか解りませんが、財布ありがとうございました。では、急ぎますんで。」彼が後ろで小さく名前を呼んでたけど、涙が出てきたから振り返らなかった。
――その日の夜
彼からメールが来た。
『理恵、俺たち別れたけど、少し話がしたい。次の土曜の7時、いつも待ち合わせてた公園で待ってる。』
行くわけないじゃん!そう思った。
確かに、振られたのは私だったし、あいつのアドレスを消してない自分を未練がましいな、とも思う。今更なんの話がある、ってのよ。…今更。
メールが届いた日、私はそう思っていたはずだったんだけど、
待ち合わせの5分前、私たちは再会したのだ。
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